2001910日            

東京都衛生局長

 今村皓一 様          

                 要望書

 

 イデアフォーは、1989年に乳がんを乳房温存療法で治療した患者を中心に、患者本位の医療の実現を目指して発足した市民団体です。自分達の体験から医療情報の乏しさ、医療の閉鎖性に愕然とし、インフォームド・コンセントの推進、乳房温存療法のみならず広く医療情報の収集と提供を目的に掲げ、活動しています。会員数は約500名です。

 

 先般「都立病院の患者権利章典」(以下「権利章典」)が制定されると聞き、大変期待を持っておりました。1973年米国病院協会による「患者の権利章典」制定に遅れること28年、ようやく日本でも本格的な権利章典が作成されると考えたからです。

 発表された「権利章典」を読み、第1項から第7項までの「患者の権利」については、期待通りの内容でしたが、第8項から第10項に「患者の責務」が入っていることに関して大きな疑問を感じました。患者の権利章典は明確に患者の立場に立ち、患者に代わってその権利を主張するものです。欧米での権利章典の中にも「権利」と並んで「責務」が入った形は見たことがありません。

 私達の疑問を検討していただき「権利章典」の改訂版を早急に作成くださいますよう要望致します。お忙しい中恐縮ですが、1031日までに文書でご回答くださるようお願い申し上げます。 

 

 以下「権利章典」第8項から第10項の問題点を詳述します。

 

1.「患者権利章典」に「患者の権利」と同列で「患者の責務」が入っているのは、整合  

性に欠ける。

 第1項から第7項は、それぞれ「良質で公平な医療」「価値観の尊重」「説明と情報を受ける権利」「患者の選択権」「診療記録の開示の権利」「個人情報保持とプライバシーの遵守」「臨床試験に関する患者の権利」というように、基本的人権に関わる重要な患者の権利がほぼ網羅されていると考えます。

 ところが、第8項から第10項に突然「患者の責務」という強い言葉で、患者が守るべきとされる行動規範が盛り込まれています。その内容は、「責務」というよりは「患者への依頼」とでもいうべきものであり、患者の人権の確立をうたった第7項までとはレベルが違い、整合性を欠いています。患者としては「権利章典」に「権利」と同等に「責務」が述べられていること自体が奇異に感じられます。また、「責務」が入ることによって、「責務」を果たしていないと患者が糾弾されることを恐れます。

 イデアフォーは「患者の責務」の3項目を「権利章典」の項目から外し、「付記」のような形で別途記載することを提案致します。

 

2.「患者の主体的な医療への関わり」の内容を「患者の責務」に矮小化している。

 「東京都立病院倫理委員会報告」は、「4『都立病院の患者権利章典』の内容 (2)患者の責務」の部分で、この項目を作成した理由を以下のように説明しています。

 「医療は患者と医療提供者が相互に協力して作り上げていくものである。そして、『患者中心の医療』を実現していくためには、医療提供者や病院組織が患者の権利を尊重して対応するだけでなく、患者自身も責任ある主体として医療に積極的に参加していくことが必要である。このような認識に基づき、患者の責務に関する項目を掲げたものである。」

 私達は、この理由に納得できません。「患者が責任ある主体として積極的に医療に関わる」とは、とりもなおさず、第1項から第7項の「患者の権利」にうたわれている、「良質で公平な医療」を要求し、「価値観」や「個人情報の保持・プライバシー」を損なわれるようなことがあれば抗議し、「十分な説明と情報提供を受けた上で納得して治療法を選択」し、必要なら「カルテの開示」を求め、「臨床試験への参加について主体的に判断する」ことに他なりません。

 前述したように第8項から第10項はいわば「患者への依頼」とでもいうべきものであって、それらを守ることが「主体的に医療に関わる」ことではありません。

 

 以上、「権利章典」第8項から第10項への疑問点を述べました。

 私達は、今回都立病院が「患者権利章典」を制定し、広く普及していこうという試みを高く評価するものです。福岡市の千鳥橋病院のような民間病院での「患者の権利章典」制定の例はありますが、数は少なく、影響力も大きいとはいえません。都立病院での「患者権利章典」制定は、他の自治体への波及力を持つと思われます。

 ぜひとも、より良い、患者が納得できる内容に改善していただきたいと思います。

 

添付資料:『イデアフォー通信』第38号、第39

     『乳がん治療に関する病院&患者アンケート』

     『乳がん治療・日本の医療 イデアフォー講演録』

     『がんの痛みはどこまで取れる?―第12回イデアフォー総会講演録』

         

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